2013年御翼10月号その1

神様のウィンク ――スクワイア・ラッシュネル

 今、ニューヨーク市は全米でも最も安全な大都市となったといわれている。ニューヨーク市の犯罪率を半減させたのが、1994〜2001年まで市長だったイタリア系米国人のジュリアーニ氏(カトリック)である。氏は、「最も多く犯罪率を削減させた市長」としてギネスブックにも登録されている。彼は現役の市長だった一九九九年四月、上院議員選挙に出馬することを表明するが、翌年、前立腺がんが発見され、選挙戦から撤退する。「前立腺がんです。直ちに治療を行わなければなりません。上院議員への立候補も含め、現在の活動をすべて停止してください」とジュリアーニ市長は医師から宣告される。「なぜ自分が?そして、どうして今?」と市長は考えた。そして、これが誤診であるように、さもなければ、奇跡的な癒しを祈った。更に、どうすべきか知恵が与えられるよう、祈り求めた。数時間後、市長は記者会見を開き、カメラに向かってこう述べた。「どうしてこのようなことが人生で起こるのか、多くの場合、分からない。しかし、必ず最後にはちょうどよくなるもののようだ」と。
 それから一年半後、ニューヨーク同時多発テロが起こり、なぜジュリアーニ氏が議員にはならず、市長で居続けたかを知ることとなる。もし彼ががんにならず、上院議員選挙に出馬したならば、当選してもしなくても、2001年9月11日当時、ニューヨーク市長ではいられなかった。彼は全米の人たちが悲しみ、ショックを受けているときに、市長として、その痛みを鎮める役目を担うことになったのだ。神はどうしてジュリアーニ氏の癒しの祈りに答えられなかったのだろうか。前立腺がんは、氏が神の望まれる道へ進み、神が備えられた目的へと導くための手段だったのだろうか。ジュリアーニ氏本人はそう受けとめている。「がんになった体験は、9・11後に私がしなければならないことへの善い備えとなりました。苦難の日々を過ごす遺族の皆様を慰めるためにです」と氏は語っている。ジュリアーニ市長は同時多発テロ事件後、更なるテロの防止に奔走し、高い危機管理能力を発揮したことで、全米のみならず世界からの賞賛を集めた。タイム誌によって二○○一年の「今年の人」に選出され、英国女王エリザベスU世から、ナイトの称号を授けられている。

 以下は、スクワイア・ラッシュネル著『神があなたにウィンクするとき(When God Winks at You)』(和訳未発行)からである。
 「人生の岐路には、神がおられ、同時にサタンも待ち構えている」と、オードリスコル牧師が記している。生活様式を変えることになる岐路では、神様とサタンがいて、神に聞き従えば祝され、サタンの言うことに従えば、滅びの人生となる。申命記七章八節に、「主は力ある御手をもってあなたたちを導き出し」とある。主の御手による導きを、スクワイア・ラッシュネル氏は、「神のウィンク」と表現する。「ウィンク」とは、「私はお前のことを気にかけている」というしるしなのだ。
 これまでの人生で、「幸運に恵まれた」と思える出来事が数多くあったはずである。人の目には偶然に見えるそのような出来事の多くが、神様のウィンクなのだ。何かのきっかけを通して神はあなたに語りかけ、そっと背中を押し、ちょうど良いタイミングで大惨事から救い出してくださったことがあるはずである。これまで、人生の岐路に立ったときに起こった、神様のウィンクを思い起こそう。それは、愛する者を失ったとき、生涯の伴侶を見つけたとき、赤ちゃんが生まれた時、引っ越した時、転職した時、あるいは信仰へと導かれたときだったかもしれない。
 過去に起こった神のウィンク、祈りの応え、と思える出来事のリストを作成しよう。神のウィンクは、神からの、地上にいるあなたへの個人的なコミュニケーションである。それは、将来が不安に思えるときでも、神が導いてくださり、あなたが決して独りではないことのしるしである。あなたは常に、神のGPS(global positioning system ではなく、God’s Positioning System)で見守られているのだ。 
 そして、著者は夫人と共に、祈りの重要性を強調する。「神は私たちに、神とコミュニケーションして欲しいと願っておられるのです。祈りの力を過小評価してはなりません。祈りのパートナー、配偶者、子どもたちを、一日5分、40日間祈ってみてください。必ず違いが生まれます」と。神様のウィンクによって、必要は備えられ、いつでも神は私たちのことを気にかけ、導いておられることを確信しよう。

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